夏休みの動物たち、預かります
曽和裕次
小さな動物園のような小学校
僕が通った大阪の小学校は、まるで小さな動物園でした。ウサギやニワトリはもちろん、アヒル、アイガモ、ホロホロ鳥、そしてなんとヤギや羊まで。数十羽のセキセイインコに爬虫類や両生類、熱帯魚など、多種多様な動物たちが僕たちの好奇心を刺激していました。
動物王国の小さな管理人
僕の家は学校の目と鼻の先でした。玄関を出て狭い道路を渡れば、そこは小学校の正門。チャイムが鳴ってから家を出ても間に合うほどの近さです。当時、ムツゴロウの動物王国に憧れ、動物が大好きだった僕は、迷わず飼育委員に志願しました。この立地と役割のおかげで、日曜日は一人で動物たちの世話をする特別な役目を任されたのです。朝早くから昼過ぎまで、掃除に餌やりに奮闘した日々を、今でも鮮明に覚えています。
小学5年生の頃の筆者
教職員の負担という新たな課題
あれから約40年。最近の京都新聞の記事を読んで驚きました。現在の京都市では、夏休み中の動物の世話を主に教職員が担当しているそうです。特に学校閉鎖日(8月7〜16日)でも、動物の世話のために出勤せざるを得ない状況があります。生き物との触れ合いは大切ですが、それが教職員の休暇取得を妨げているのです。
獣医師会の画期的な提案
この問題に一石を投じたのが京都市獣医師会です。夏休み中の学校閉鎖日に動物を預かるサービスを提案しました。預かり先は動物病院。専門家が世話をするので体調管理も万全です。費用も1匹1週間1万円と割安。今年は30校園から37匹のウサギが15の動物病院に預けられる予定です。
動物病院が担う新しい役割
過去と現在の動物との関わり
実家が商売をしていて日曜も休まず営業していたため、出かける予定もなく、動物の世話が僕の大切な日課でした。今回の獣医師会の取り組みを知り、時代によって変わる動物との関わり方を実感します。日常のあたりまえを疑い、自分のスキルで社会課題を解決する。この視点が、より良い社会づくりの糸口になるのではないでしょうか。動物たちが教えてくれた大切なことは、今も生きています。
変わらぬ動物たちの大切さ
40年前、僕は動物の世話を通じて責任感や生命の尊さを学びました。今、獣医師会の取り組みは、専門知識を活かした新しい社会貢献の形を示しています。時代と共に変わる課題に対し、それぞれの立場でできることがある。それが、動物たちが教えてくれた大切な学びかもしれません。学校での動物飼育の形は変わっても、子どもたちの成長を支える役割は、今も昔も変わらないのです。
PROFILE
公益社団法人京都市獣医師会
人と動物の共存できる京都を目指して