縫い目に宿る、野球の魂
曽和裕次
ミシンとバットが織りなす夢の物語
再び味わう、野球観戦の臨場感
昨年に続き、8月2日の「パーツの日」に人生二度目の野球観戦に行ってきました。去年も感じましたが、改めて驚いたのは、ファールボールの多さです。「あんなにファールボールが飛んでくるんだ」。観客席にボールが舞い落ちるたび、「おー」という歓声と共に、周囲から身を乗り出す人々の姿が。その度に心臓がドキドキ。テレビでは決して味わえない緊張感と興奮が、スタジアム全体を包み込んでいました。現地でしか体験できない、野球観戦の醍醐味を存分に味わいました。
特別な日に実現するプロジェクト
実は今回の観戦には特別な理由がありました。この日、京セラドームではパーツの総合商社であるモリト株式会社の「モリトスペシャルデー」として試合が開催されたのです。試合開始前、私たちが携わるプロジェクトの発表がありました。モリト株式会社とオリックス・バファローズが協力し、選手が実際に着用したユニフォームを「アップサイクル」して子どもたちへのお守りに生まれ変わらせる取り組みです。
ユニフォームが紡ぐ新たな物語
このプロジェクトは、使用済みユニフォームに新たな生命を吹き込む試みです。選手の汗と涙、そして観客の熱い想いが染み込んだその布地が、クリーニングを経て子どもたちの未来を見守るお守りへと姿を変えます。野球の感動を形にし、次世代に繋ぐ。そんな思いが込められたこの取り組みは、スポーツの力と企業の社会貢献が見事に調和した好例と言えるでしょう。プロジェクトの進行を間近で見守れることに、大きなやりがいを感じています。
モリト株式会社は、普段は脇役に徹する小さなパーツを扱う会社です。ホックやボタン、これらの「縁の下の力持ち」たちが、今回は主役の座に。同社が8月2日を「ハッピーパーツデー」と名付けたのも、パーツの重要性を伝えたいという思いからです。野球もファッションも、小さな部品が大きな感動を生み出します。そんな哲学がこのプロジェクトには込められているようです。目立たないけれど、なくてはならない存在。その大切さを、ユニフォームの変身が教えてくれます。
新たな歓声、未来へ響く
試合終了後、スタジアムを後にする行列の中、ふと思いました。ファールボールに「おー」と歓声を上げた、あの瞬間。同じような歓声が、今度は別の場所で聞こえてくるかもしれません。使い終わったはずのユニフォームが、子どもたちの未来を見守るお守りへと姿を変える時。きっと子どもたちも、受け取った瞬間に思わず「おー」と声を上げることでしょう。古いユニフォームは、グラウンドを飛び出し、新たなステージで輝き始める。野球の感動は、試合後も、違う形で続いていく。このサステナブルな取り組みに携わり、スポーツと企業の協力が生み出す可能性の大きさを実感した特別な一日となりました。