優雅な生地とシンプルな金具で構成された美しいバッグの数々 「CADEAU de la part de kyoto」のオーナーであり作家、安本秀子さんのインスタグラムはフォーマルにもカジュアルにも、洋服にも和服にも似合うバッグが、さまざまなライフシーンを背景に紹介されています。
「バッグの色や形だけでなくコーディネイトのアイディアや、どんな気持ちでデザインしているかも写真で伝えられるのがインスタグラム。初めてのお客様にも共感していただきやすいんだと思います。バッグのご注文だけでなく、お客様から別の方をご紹介いただいたり、展示会のお誘いなどもインスタグラムから。経営の経験も、店舗も持っていない私にとってこれ以上のツールはなかったと思います」
20代で結婚した安本さん。結婚後は主婦として子育てと家事に専念するなか「趣味として」好きな手芸を続けていました。「自作のストールやアクセサリーを身につけて子供の習い事に行くと、ママ友から『私にも作ってほしい』と言われて。その人に似合う色やデザインを考えて、出来上がったものをお渡したとき喜んでいただいたのが、ただただ嬉しかった。仕事にするつもりはまったくありませんでしたね」
もともと凝り性だという安本さん。口コミでどんどん制作依頼が入るようになると、「喜んでほしくて」採算度外視で素材を揃えたりしていたそう。「でもそれじゃ続かない(笑)」。そこで知人とふたりで会社を作り、その後安本さん独自のブランド「CADEAU de la part de Kyoto」を立ち上げることに。現在では自社のウェブサイトも運営しています。
「結婚前は航空会社のCAをしていて、一対一のコミュニケーションは好きなんです。ただ、おおぜいの人の前に出るとか、一度に複数の人と話すのが苦手で。だから、店舗を持ってビジネスを広げていくような選択肢はありませんでした。インスタグラムは写真を通しての交流ですが、そこに写っているものがとても深く物語ってくれるので、私のようなタイプには口頭で説明するよりも確実にお伝えできるように感じています。お客様からも、まずお手持ちの服やお着物の写真を送っていただいて、どんなものがお好みなのか、どんな場面でお使いになるのか、できるだけ情報収集します。インスタグラムを介してやりとりしたあと実際にお会いすることもあるのですが、大きな変更やブレはありませんね。SNSは対面よりコミュニケーションが浅いと言われますが、私はそんなふうに感じたことはありません」
インスタグラムというツールがなかったら、経営経験も資本もない自分のような主婦が、老舗デパートで催事をしたりセレクトショップに作品を置いてもらうようなチャンスはなかった、と安本さんは振り返ります。
「お世話になっている方に『運と縁はタイミング』と言われて、ほんとうにそうだなと実感しています。未知の世界の人を紹介されたとき、ひるまないで行ってみよう、会ってみようと思うこと。私のバッグを購入してくださった方のご紹介であれば、そこは自信を持っていけるのですから。あとはもう情熱だけですね(笑)」。バッグに使われている希少な煤竹(すすたけ)や鼈甲(べっこう)などの素材も、地方の専門店まで出向いてこちらの熱意を伝えると、店主から「こんなのはどう?」と提案してもらえたりするんです、と安本さん。「営業トークなんて出来ませんし、気に入ってもらおうと考える余裕もありません(笑)。良いものを作りたい、お届けしたいという気持ちだけで動いています」
そんな安本さんの「手作り」の原体験はお祖母様にあるそう。「得意の編み物で何か作って、家族が喜ぶのを見るのが大好きな人でした」。女性は「これだ」と感じるものに出会うと輝くんですよ、と安本さん。「表情や空気が変わるんです。その瞬間がほんとうに好きだから、この人に似合うもの、喜んでもらえるものを作りたいと思うんです」
そんな安本さんは「工程を絶対に妥協しないこと」を自らに命じています。「いくら思い入れがあろうと、人には出来上がったものしか見えませんし、見ません。どんな小さな違和感でも納得するまでやりなおすことが、長い信頼関係につながっていくのだと思います」
PROFILE
安本秀子(やすもとひでこ)
大学卒業後、航空会社のキャビンアテンダントとして就職。その後、結婚して専業主婦に。趣味が高じて知人とバッグの会社を立ち上げたのち、自身がデザインしオーダーメイドで制作するバッグブランド「CADEAU de la part de kyoto」を設立。最近、国内の著名ブランドが採用している国産の緻密で品格あるツイード生地も取り扱いできるようになり、今後の展開を楽しみにされているそう。安本さんの作品は東京のセレクトショップや名古屋の老舗デパートなどでも展示されています。
INFO
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